福祉の価値観の転換
社会福祉基礎構造改革の荒波に向かう
わが国は1995(平成7)年に高齢社会に突入。国はさらなる高齢化に向けて2000(平成12)年4月から介護保険制度を導入しました。この制度による最大の変化は民間営利企業が介護・福祉分野へ参入したこと。「市場化」の流れが福祉の世界を大きく変えていきます。
「措置から契約」への転換により、社会福祉法人は急激に経営感覚を求められ始めました。しかし近年、経営中心の考え方が行き過ぎたのではないかと、社会福祉法人の存在価値を巡って様々な議論が始まりました。介護報酬の切り下げ、社会福祉法人課税問題などかつてない荒波にもまれ、今の社会福祉法人は漂う小舟のようなものです。
与えられる福祉から、切り拓き創造する福祉の時代に。これまでの神戸聖隷は行政の期待に応える形で成長してきましたが、もうそこから脱却して自らの勇気と決断で未来を切り開かねばならなくなりました。
創始メンバーが去る中で基本理念を中心において歩む
福祉制度の転換期に、2000年までの法人の順調な発展を支えた創始期と成長期のクリスチャンメンバーが次々と定年を迎えました。荒波に海図を失う状況に似ています。ただ、先輩たちは「基本理念」と「行動規範」を残してくれました。
それは、私たちがキリスト教精神に基づき聖書が示す愛と奉仕の実践を通して社会福祉を向上させることを目的とした集団であるとし、そのために私たちは利用者に仕え、一人ひとりのいのちをもっとも大切なものとして守り、利用者が生涯をいきいきと生きることができるように支援して、人類全体の幸せを追求するように行動しなければならないというものです。
基礎構造改革の全体像が見え始めた2006年ごろからの10年間は、折に触れて基本理念を唱和することで、神戸聖隷を創設された神様の意図を知り、聖書に示された人間観を中心において毎日の福祉の仕事に向かう心を整えるように、ひたすら努力しました。